■「むし歯が減少する」現実をいかにとらえますか?
文部科学省は12月8日、2005年の学校保健統計調査を発表しました。
「むし歯(処置完了を含む)だったのは幼稚園54.4%(95年度調査74.7%)、小学校68.2%(同87.3%)、中学校62.7%(同86.6%)、高等学校72.8%(同90.6%)と、10年前に比べ減少している。むし歯の割合を年次推移をみても、75年度に行った同調査ではすべての段階で90%を超ていたが、その後は今年の調査まで多少増減しながらも割合は低下し続けていることが分かった。」(MMPG メディカルウエーブ №2922)
この記事を読まれてどんな感想をお持ちでしょうか。もう10年くらい前になりますが、この件に関して、ある歯科の先生から「これからむし歯はだんだん減ってくるし、歯科も大変だよな。」と言われたことがあります。その時、私は「この先生は、何のために歯医者になったのだろうか。」と率直に思ったのをいまでも覚えています。
ある歯科医院で、スタッフにこの記事を見せてみました。「何を感じる?」と聞いてみたのですが、あまりピンと来ていないようでした。私は、その時、スタッフに「皆さんが頑張ってきたから、子供のむし歯が減って来たんですよね。良かったじゃないですか。」と言いました。
歯科医院が「むし歯」を相手にしているかと考えたときには、「むし歯が減少する」という状態はきびしい現実としてとらえられるでしょう。しかし、歯科医院が「むし歯をなくす」ととらえたときには、喜ばしい現実としてとらえられます。ある先生は、さらに思うかもしれません。子供の口腔内を「むし歯」だけでとらえると改善しつつあるが、それは一面で、「噛む」という切り口からとらえると問題は根が深い。例えば子供の口呼吸の問題は、何も手がついてない状態に近いと。
来年4月の保険改正も同じと思うのです。「厚生省は何を考えているんだ」「子供のむし歯が減って大変だ」同じレベルの話と感じるのは私だけでしょうか。自分の力ではどうにもならないものは、そのことを納得し、次の一手を考える。そんな考え方の切り替えを、早急にしないと経営が見えなくなるのではないでしょうか。
■スタッフ力が医院の評価につながる
年末、うちの娘が「奥歯が痛い」というので、大晦日に当番医の歯科医院に車を走らせて診てもらいに行きました。ただ、むし歯が大きく、紹介状を書くから地元の先生に診てもらいなさいとのお話で、その日は薬だけもらい帰ることになりました。
紹介されたのはN歯科医院、うちの家内の話では患者さんが多くて、かなり流行っているとの事でした。商売柄、「どんな歯科医院?」と思いながら正月明けの5日に娘を連れていってみました。
行ったのは朝の9時過ぎでしたが、既に2人の患者さんが治療中、もう1人、患者さんが待っていました。娘は、紹介状の効果か10分も待たずに診てもらうことができました。娘の治療が終わるのを待っていると、患者さんがどんどん来るのです。20分も経つと患者さんで待合室はもう一杯です。
「確かに流行っていそうだけど、なぜ?」別に何ていうことはない(失礼!)待合室です。確かにシンプルできれいな待合室ですが、スリッパが滅菌スリッパでもありません。受付横に講習会の修了証が掲示してあるわけでもありません。しかも、去年の6月の歯科衛生週間のポスターがまだ掲示してあります。表面的には、ごく普通の歯科医院です。「何がこの歯科医院に患者を引きつけるのか」 わかったのは、スタッフがすばらしい。まずは受付、年齢は30~35歳くらいでしょうか、すごく自然体です。自然に立ち接客ができて、患者さんを名前で呼んでいますし、笑顔も自然です。
途中、来院日を一日間違えてきた患者さんがいました。すると、受付はその患者さんの顔を見るなり、「○○さん、何かありましたか?○○さんのご予約は、明日だったと思いますが。」と言いながら、診察券の予約欄を確認するのです。「この受付は、今日誰が来るか全部頭に入っているんだ!...」そんなところから、患者さんの信頼感や親近感が増していくのかもしれません。
次に歯科衛生士。技術はわかりませんが、感心したのが姿勢です。スッと背筋が伸びていますし、髪はいわゆる茶髪ではなくきれいに束ねていて、見ているだけで安心感と清潔感を感じます。あとから家内に聞いたのですが、ここは衛生士さんがいいと評判なのだそうです。
ここまでスタッフを揃えようと思うと、院長がすばらしくなくては集まらないはずです。教育だけでは、ここまでスタッフを育てることはできません。日頃の院長の姿勢がスタッフに表れてきているのです。「なぜ、うちにはこんなスタッフしか集まらないのか」とぼやく院長がいます。それは、天に唾を吐いているようなもので、自分の姿勢が、集まってくるスタッフさえ決めてしまうのです。増患のために院内改装も必要ですが、患者さんが、見ているだけで安心感や清潔感を感じるスタ
ッフを育てることももっと大切に思います。
■思わぬところに落とし穴?
口腔ケア商品の売上高は、歯科医院の売上に大きく貢献するものではありません。私どもがその金額を見るときには、患者さんと医院のコミュニケーション度合いを測る値として見ます。歯ブラシやチェックアップなどの購入金額が高いということは、スタッフと患者さんが治療以外にもいろいろ話している証拠になるからです。
医院規模にもよりますが、目標は月額3~5万円以上です。自院の「雑収入」の金額が毎月いくらなのか、チェックしてみてください。ある医院では、ソニケアー等も含め、毎月10万円、年間で150万円を販売しています。逆に月に1万円も売っていない歯科医院では、患者さんとのコミュニケーションに何らかの問題があるかと思われます。
販売高が少ないある歯科医院での話です。受付スタッフに、「これって、何に使うんですか?」と窓口で販売しているケア商品を、指差しながらたずねたことがあります。すると、その医院の受付スタッフは「実は私も何かわからなかったんです。坪島さん、知っています?」と逆に聞き返す始末でした。(「ああ、これでは売れるはずがない。」)と思った次第です。
受付横の口腔ケア商品は、開業の際、業者の方が適当に持ってきたものを、そのまま置き続けていることがよくあります。又、キチンと吟味することなく置いてある商品も結構あるようです。そのためか、受付が商品の内容が良くわかっていないことがあるのです。
受付スタッフは、これらの商品に関して・販売している商品はすべて、何に使う商品なのか知っておく。
・何が売れ筋なのか把握し、院長に報告できる。
・患者さんが聞いてきたときに、ほとんどのことは院長や歯科衛生士の助けなく患者さんに答えることができる。
・出入りの歯科商社から、新商品や他院での売れ筋情報を得ることを心がけている。
・商品のディスプレイやPOPを患者の目線に立ちデコレートできる。
受付は医院の顔です。口腔ケア商品は、その受付の結構目立つところに置かれています。それなのに、扱い方はあまり重要視されていないのが現状のようです。もっと、受付スタッフが自院で販売しているケア商品の知識を持ち、自信を持って患者さんと応対する事が、患者さんとのコミュニケーション作りになるのではないでしょうか。
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